見出し画像

超人気作品『傲慢と善良』が突きつける恋愛と結婚のリアル──人生で最も心をえぐられた小説から学んだこと

傲慢と善良

あらすじ
ある日、マッチングアプリで知りあった婚約者の坂庭真実が姿を消した。西澤架は、彼女の足取りをたどるうちに、真実の本当の姿を知っていく。また、架も自分では気付けなかった己の「傲慢」さと向きあうことになる。多くの現代人が抱える"闇"を浮き彫りにさせられる物語。

『傲慢と善良』は累計発行部数100万部突破の超人気作品です。2024年には実写映画化もされました。根強いファンがいる本作は、読書会の課題図書にもなることも多く、読んだあとに誰かと感想をシェアしたくなります。

この記事を書くにあたり再読しようと思ったんですが非常に腰が重かった・・・なぜなら1回目読んだとき、心を相当えぐられたからです(笑)

本作を読んでいると、嫌でも自分の中にある”どす黒い感情”と向き合わされます。だた、その内容の面白さからページを捲る手が止まらず、約500ページを3日で読み切きりました。

「恋愛」と「結婚」は全くの別物とわかってはいるが・・・

私自身、30代未婚の男性ということもあり「結婚」について考えることがあります。基本的には1人の方が楽と思っていますが、たま~に1人でいることが無性に寂しくなることがあります。

パートナーがいれば、この寂しさが少しは柔らぐのではないかと思いマッチングアプリをやったこともあります。しかし、毎回テンプレのような同じやりとりと、相手を値踏みしたり、逆に値踏みされる感覚がしんどくなり結局やめたんですよね。

マッチングアプリを使っていたとき、心のどこかで「はたしてこれで本当に将来を見据えたパートナーが見つかるのか?」という疑問が湧いていました。

「恋愛」と「結婚」は違う。

婚活指南書の1ページ目に書かれていそうなこの言葉が、自分のなかにも刷り込まれていたからなんでしょうね。理想をいえば、恋愛の延長線に結婚があればいいんですが、真っ向からその考えを受け入れられなかったんです。

ただ、頭でわかっていても恋愛と結婚をスパンと切り分けることができれば苦労はしません・・・

相手に求める条件を絞り込もうとしても、一生を共にするかもしれないパートナーを見つけるのに妥協はできない。結局、相手の粗ばかりが目につき、気づけば底なしの沼にハマっていたなんてことは”婚活あるある”ではないでしょうか。

親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない。

彼に、違和感なく抱かれることのできる人のことが羨ましかった。それさえできれば私だって、誰かの奥さんと呼ばれる人に、すぐになれたかもしれないのに。

出典:傲慢と善良


本作でも親に従い結婚相談所に通っていたヒロインの真実は「見た目がタイプじゃない」という理由でお付き合いの申し出を断ります。

真実自身も「恋愛」と「結婚」が違うことくらい分かっています。けど、好きでもない人とガマンしながら生活するイメージが、どうしてもできなかったんです。

真実は「自分は高望みなどしていない。ただ、ささやかな幸せを望んでいるだけなのに。」と思っているんでしょうが、この”ささやかな幸せ”の言葉の裏には、自分では気づけていない傲慢さが隠れているんでしょうね。

「自己肯定感」と「自己愛」は表裏一体

恋愛・結婚どちらにしても必要なのが、「自己肯定感」と「自己愛」の絶妙なバランスだと思えます。

皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです。傷つきたくない、変わりたくない。

出典:傲慢と善良

誰かを好きになったさい、自己肯定感が低いと「あんな素敵なひとが、自分を相手にしてくれるはずがない」と勝手に自己完結して諦めてしまうことがあるように思えます。

この自己肯定感の低さから生じる感情の裏側には、傷つきたくない・変わりたくないという自己愛の強さがあったことに、本作を読みはじめて気付かされました。

今まで誰にも見せてこなかった心のうちを言い当てられたようで、作者の辻村深月さんに恐怖を覚えました……

傷つくことを避けてばかりいると、いざという時に一歩踏み出せず、何もできなかった自分に失望して、かえって深く傷ついてしまう。

自分を大切にすることも大切ですが、欲望に従い行動し、傷つきながら立ち上がることで、少しずつ自分を受け入れられるようになるのかもしれません。

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

今回紹介した『傲慢と善良』は婚活をテーマにしていますが、甘々の恋愛物語でもなければ、夢見る結婚物語でもありません。むしろ残酷といえるほどリアリティーがある作品です。だからこそ、読んでいて身に覚えがあるように感じ、多くの読者を惹きつけているんでしょうね。

ちなみにBOOK HOTELの支配人であるmoonさんが、婚活を題材に執筆しているノンフィクション作品『婚活物語。』もオススメ!

34歳の女性が主人公で、同世代として「いや~、その気持ち痛いほどわかる……」と共感しながら読んでしまうほど、リアルに婚活の模様が描かれています。興味がある方は、ぜひこちらも合わせて読んでみてください。

ライター:Reo


最後までご覧いただき、ありがとうございます。 ぜひあなただけの1冊を探しに、遊びに来てくださいね。