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【空からの贈りもの】雪にまつわるエッセイ・小説おすすめ特集

年が明け、あわただしく1月を過ごしていたら、いつの間にか2月!
実は、1年の中でいちばん寒いのって、今ぐらいの時期なんです。
少しずつ春の足音も聞こえてきた今日この頃ですが、まだまだ雪のニュースや話題は続いていますね。

大雪の交通事情や雪かきなど、大人になると悩ましいことも増えてしまう雪ですが……。雪の表情はさまざまです。
子どもの頃、空を見上げて「雪だー!」とはしゃいでいた思い出はありませんか?

今回の記事では、「雪にまつわるエッセイ・小説」をご紹介します。
降りつもる雪にワクワクしていた気持ちがよみがえってくるような、おすすめの作品がたくさんありますよ!

あたたかい部屋で、まったりとしながら読んでみてくださいね。

雪の美しさにふれるエッセイ・小説

『雪は天からの手紙』中谷宇吉郎

あふれる雪への愛、真摯な人柄がうかがい知れる文章、世界へのあたたかいまなざし。
雪を愛して雪氷学を確立した科学者から若者へ向けた、素朴でやさしいエッセイです。

岩波少年文庫の本ということもあり、私のような、科学の話についていけない文系人間でもなんとか読めました。実験の詳しい説明については、?マークばっかり浮かびましたけども……笑

著者は雪の結晶の美しさに感動し、雪の研究を進め、ついには世界で初めて人工雪を作り出すことに成功しています。

この本を読み始めてすぐ、著者の中谷宇吉郎さんが描きだす情景の豊かさに驚き、また人々とのあたたかい交流から、奥深いやさしさを持っていることが分かりました。
そして、現代の世の中は、こうした多くの地道で困難な研究の上に成り立っているんだと、改めて気づかされます。

朝起きると一面の青空で、朝日が白銀の世界を茜色に染めているような日でも、夕方になるとたいていはみごとな樹枝状の結晶が細雨のように音もなく降ってくる。

『雪は天からの手紙』「雪の十勝」より

中谷宇吉郎さんは、生涯で30冊以上のエッセイ集を出版しています。
科学に一生を捧げながら、一般の人へ分かりやすく伝えることに尽力した、真摯な姿勢が感じられますよ。

『雪のひとひら』ポール・ギャリコ

「ある寒い日、雪のひとひらは生まれた。地上に舞いおりたときから、彼女の長い旅がはじまった。伴侶となる雨のしずくとの出会い、新たな命の誕生。」

『雪のひとひら』内容紹介より

雪のひとひらを擬人化し、その一生を綴った、美しい詩編のような小説です。

読んでいると、まるで私たちも雪として生まれ、いっしょに旅をしているような心地になります。生まれた場所の静謐さ、孤独にも似たよりどころのなさ、初めて見た日の出の美しさも、分かる気がするように。

雪のひとひらは、雪だるまの一部にされたり壊されたりしながらも、この世を美しいと思い、なぜ雪として生まれたのかを問い続けながら世界をめぐっていきます。

春がきて、雪は水となり、野原や山を駆け、さまざまな花や草木の色を映しだす。そして雨のしずくと出会い、愛しあって家族となり、おそろしい困難を乗り越えて、子どもたちが育っていく……。

空で生まれた、雪のひとひらの長い旅。それが終わりを告げる時まで、人生のように壮大な物語が、やさしい語り口で描かれています。

遠い海外の街並みや人々の暮らし、四季折々の表情が語られているので、読み終えると、自分も大冒険をしたような気持ちになりますよ!

お話の区切れごとに文頭へあらわれる、小さくて可愛らしい絵も見どころです。

『白銀ジャック』東野圭吾

ウインタースポーツ好きの心をわしづかみにする、白銀世界のミステリー!

雪で飾り立てられたスキー場はもちろんのこと、スキーやスノボの疾走感もありありと体験できる、アップテンポな描写力はさすが。
ウインタースポーツの経験がなくても、登場人物と一緒にゲレンデを滑っている気にさせてくれる一冊です!
私は人生で1日しかスノボを体験したことがないのですが、「そうそう、こんな感じだった!」と楽しめました。

そして、謎が解明するまでの「どうなっちゃうの!?」感は、東野圭吾さんならでは。後半からスピードを増していく展開には目を回しそうですが、きちんと着地できる安心感も見事です。

さまざまな登場人物の視点で描かれていく、事件の真相はいかに!?
冬を締めくくるミステリーとして、ぜひ読んでみてくださいね。

『白銀ジャック』をはじめとした東野圭吾さんのスキー場シリーズは、『疾風ロンド』『雪煙チェイス』『恋のゴンドラ』と続いていきますよ!

いつまでも雪を眺めていた、あの頃のように

雪の降る夜は、すべての音が吸い込まれていくよう。
雨でもなく雹でもない、ふわふわとした白いかたまりがいっせいに降り注いでくる光景は、いつ見ても口がぽっかり開いてしまいます。

春とともに雪はとけて、その形を変えていくけれど。
雪の降る空を見上げて、心をからっぽにしていた頃の気持ちを、いつまでも覚えていたいものです。

本日ご紹介した、「雪にまつわるエッセイ・小説」3冊。
あたたかい春の訪れを心待ちにしつつ、冬にしばしのお別れをする準備として、ぜひ読んでみてくださいね。

ライター:なずなはな

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