【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(17)真剣交際・検討編
#50 結婚相談所は、「相談」が苦手な人のためにあるのかもしれない。
来る金曜日は、相澤さんとのお見合い後初のデート。
イタリアンのコースをすでに予約している。(私が。笑)
翌日土曜日は、安藤さんとの2回目の水族館デートが控えている。
「なんだか、このままスムーズにいけそうだな」と思うのは安藤さん。
圧倒的に相手からの興味関心を感じるし、結婚観についても話せているし、もはや相澤さんを断って進むべきなのかもと思えるくらい、私自身がときめきを感じているのは、安藤さんに他ない。
こんなに「女性扱い」されていることもなかなかないし、それに子供が生まれた後のことまで真剣に考えてくれていて、とても頼りになりそうだ、と思った。
とはいえ、自分で決めるのは、とても怖い。とてつもなく怖い。これで人生が変わってしまうかもしれない。
これまで独身を貫いてきた私のこれまで下してきた判断が、 全て正しかったかと言われると、それは自信がない。
20代。結婚のチャンスだったかもしれないあの人。前回交際終了になってしまった佐野さん。私がかける言葉一つ一つで、もしかしたら「今」が変わっていたのかもしれない。
今、私は自分の判断だけで何かを決めることが、ものすごく怖い。
結婚相談所。
最初こそ「結婚できない人たちが行くところ」と少し馬鹿にしていたけれど、本当は「相談できない人たちが行くところ」なのかもしれない。
人に頼れなかったり、甘えられなかったり、つい強がってしまったり。自分一人でいろんなことを抱え込んできて、自分で全部決めてきて。そんな真面目で優しくて、でも臆病な。
そんな私みたいな人のために、こういう場所があるのかもしれないな、と思っている。
迷いながらも私は、BOOK婚のLINEにメッセージを送る。
でも、「相談できない人」としては、テキストでのやり取りの方が圧倒的にありがたいのは事実。
ZOOMでの相談は、なんだか腰が重たいところもある。怒られたくない、とかそういう気持ちもある。自分の嫌なところ、間違っていることに直面したくないのは、歯医者にどうしてもいきたくない気持ちと似ているかもしれない。
数分後。LINEを覗くとBOOK婚の男性カウンセラー「ばっしーさん」のアイコンが光っている。
BOOK婚は担当が完全固定というわけではないため、いろいろなカウンセラーさんに相談が可能だ。
普段はコンサルタントとして活躍しているらしく、moonさんやhanaさんと話した時も、「男性目線のアドバイスは、ばっしーさんに任せてください!」と言っていた気がする。
ばっしーさんが連絡をくれた理由がようやくわかった。
相澤さんもカウンセラーさんに相談しているなんて、考えればわかることなのに、思い至らなかった。
しかも、ものすごく私のことを考えてまっすぐに思ってくれているなんて。
私が勇気を出して電話に誘ったり、お店を予約したことをちゃんとみてくれていることが嬉しかった。
男性に、サプライズや紳士的なところを求めてしまいがちな私だけれど、ばっしーさんのように、今が「まっさら」な相澤さんであれば、もしかしたら私の一番の味方になってくれるかもしれない。
自分好みに仕立てる、というのはハードルが高すぎるけれど、思ったことを思ったままに口にすることは、諦めずにやってみようかなと思った。
我慢が一番、よくないと思うから。
#51 ワインと、本と。
金曜日がやってきた。
今日は、職場の最寄りから2駅離れた隠れ家イタリアンを予約してある。
こういうのは男性が予約すべし、と恋愛マニュアルにはあるのかもしれないけれど、別に女性が予約しちゃいけないということもないと思う。
実際、相澤さんがセレクトしてくるお店がどこもなんともそそられなかった(ごめんね相澤さん)ため、Googleマップの行きたいお店リストから数件気になるお店をシェアしたところ、「舞さんセンスが良すぎる。今回は任せてもいい?」と言われたのだった。
実際、お店選びは得意中の得意だから問題ないし、インスタで見たドルチェの盛り合わせがあまりに美しかったから、お互い甘党の2人にはぴったりかなと思っている。
ふと、佐野さんのことを思い出す。千葉駅のイタリアンを予約してもらった時あんなふうにモヤモヤするくらいだったら、今回みたいに私が行きたいところを言えば良かったのか。今更だけど、そういうことの積み重ねで相手へのイメージも変わってくるんだろうな。
佐野さんとは進む未来もあったかもしれないし、なかったかもしれないけど、それでもあのタイミングで出会えたからこその学びも確かにあるな、と思った。
その日。
相澤さんとのデートは…これが、本当に、驚くほど、めちゃくちゃに楽しかった。自分でもびっくりした。
実は私が頼んだコースにはワインのペアリングコースがすでに付いていて(値段高めだなと思ったのはそのせいだった)「せっかくだから、がっつり飲みますか。」との相澤さんの一声に乗せられ、存分にワインを堪能することにした。
お互いの食やお酒の好みはとても似ていて、甘党だけど甘いお酒はお酒だと思えないこと、とりあえずビール!を教わったのは初バイトの居酒屋の先輩ということ、日本酒は熱燗派で焼酎は麦一択。ワインはよくわからないけど、無駄に家にグラスは常備してる。
そんなところが似ていて、盛り上がった。
店員さんもとても朗らかなのも良かった。
「仲良しなご夫婦ですね、もう長いんですか?」
「え!まだ違います違います!!」と顔をブンブン振り回して答えたのも面白かった。
「まだ、なんですね〜!すごくお似合いですよ〜〜」
とニヤニヤされ、これはもしや…ここの店員さんも相談所の関係者か!?と思ってしまったほど。
「お似合い」そんなふうに言われたら、意識せざるを得ない。
コース3杯目の白ワインと真鯛のポワレを食べ終え、次のお料理を待っているとき、相澤さんが口をひらいた。
「さっきの、夫婦に間違われたの、めっちゃ嬉しかった。あのさ、俺、ものすごく不器用だと思うんだよね。だから、舞さんにおしゃれなお店を予約してあげるとか、サプライズで驚かすとか、そういうことはあまり期待しないで欲しいんだけど…でも…」
不意に、赤色の包み紙にくるまれた、何かを差し出される。
これは…???
「本」だった。
中には、「最高のアフタヌーンティーの作り方(古内一絵)」が入っていた。
「これ!気になってたやつです!!!!!!」
素直にめちゃくちゃ嬉しくて、目がかっぴらいてしまう。食べ物の出てくる小説もエッセイも大好物。こんなにセンスのいい本を贈ってくれるなんて。
「これ、BOOK婚のスタッフさんにも相談しながら選んだ本なんだよね。一緒に、今流行りのヌン活?できたらいいなって。この本の舞台は椿山荘っていう実在するホテルなんだけど…」
椿山荘のアフタヌーンティー。もちろん知ってる。人生で一度でいいからいつかは行ってみたかった。まさか、このタイミングで相澤さんから、提案してもらえるなんて。
「行く、行きます!!!絶対」
気づいたら、そう宣言してた。
「やったぁ〜〜、俺もずっと行きたくて!!でも男一人で行けないじゃん、めっちゃ嬉しい〜舞さんと行ける〜〜嬉しい〜〜!!」
ワインの酔いのせいかおかげか、ものすごくリラックスしてる、私たち。
正直、最初の印象は悪かったけど。
求めすぎてたけど。
一緒にいて、心から落ち着いている。
一瞬くらっとした気がしたのは、酔いだけじゃない気がして。
はにかむ相澤さんをみていたら、なんだかすごく癒されて。全く想像していなかった本のプレゼントのサプライズまでしてもらってすごく嬉しくて。
私はどこか浮き足だった気持ちで帰宅した。
#52 安藤さんが未婚の理由
人は見かけだけじゃ、言葉だけじゃ何もわからないということに、気づいてしまった。
安藤さんとの水族館デートは、正直とってもキツかった。
待ち合わせ場所に着いた途端、手を握られた。
「あ」と思った。いやだ、と思ってしまった。
前回はあんなに好意を寄せていたのに。タイミングを見てそれとなく手を離す。
その時の表情を、私は見逃さなかった。
相澤さんとのデートが楽しかったからかもしれないし、そうじゃないかもしれないけれど、やたらボディタッチが多くなってきた安藤さんのことが、どんどん嫌になっていた。
途中からは、容姿を褒められても、なんとも思わず、むしろ「もう帰りたい」それだけだった。
「恋愛の相手」なら安藤さんは最高なんだと思う。20代の頃の私だったらコロッといってたはず。手を握られても、嬉しくてニコニコしてたと思う。
でも、これは婚活だ。お互いの温度感を探りながら、一歩一歩あゆみ続けるべきものだ。
安藤さんは、きっとモテてきただろう。そしてこれからも、モテていくことだろう。
それでも。
「結婚は生活だから」
どこかで聞いたそのセリフがふっとよぎる。
安藤さんの未婚の理由が、分かった気がした。
*
こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
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