【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(10)お見合い編
#29 非効率・お見合いシステムについて思うこと。
40歳営業マンとのお見合いが迫ってきている。
お見合い前は「M12345」みたいに英語と数字だけで表記されていたこの方の苗字は、お見合いが決まったことによって開示された。
ー佐野さん。
「おんなじサ行だ〜」我ながら子供みたいではあるが、小さな共通点を見つけて嬉しくなる。
あれだけ年齢がどうの、年収がどうの、と言っていた割に、お見合いが決まって少ししたら、なんだか緊張よりも楽しみの方が大きくなってきていた。
ただ、相談所は、やはりマッチングアプリのような気楽さはない。
正直、日程の調整も、思ったようには進まなくて、「これ、効率悪いな」と思ってしまった。(スタッフさんごめん。)
でも仕方ないのかもしれない。よくよく聞くと、
まず、BOOK婚のスタッフさんが、私の予定を相手の仲人さんに伝える。
次に、相手の仲人さんが、佐野さんに伝える。
その後、佐野さんから返事を待った相手の仲人さんがBOOK婚のスタッフさんに連絡してきて、それがまた私に。これがエンドレス。ってことらしく。
言い方は悪いが、伝書鳩が2羽。そりゃあ、大変だし時間もかかるだろうなと理解した。
私も、だいぶ素直になった。
スタッフさんにお薦めされた「限りある時間の使い方」という本を読んで、「時間への概念」を変えられる経験をしたことも大きかったのかもしれない。その本には効率化を求めれば求めるほど、その空いた時間で別のことを詰め込み、どんどん窮屈な人生になるといった表記があった。
とも。
無駄を省くことが正義だと思っていたけれど、必ずしもそうでもないのかもしれない。無駄の中にも、良さがあって、人間関係まで、全部効率化する必要はないのかもしれない。
非効率なやりとり。
初めから連絡先が教えてもらえないことも、謎に苗字しか開示されないことも。
現代が色々楽になりすぎているからこそ出会いが生まれづらいのだとしたら、こういうめんどくささも相談所の良さであり、めんどくさいことすらも愛さないといけないのかなと思い直した。
何もかも、効率化ばかり指摘していたら、機械みたいになってしまうかもしれない。
もっと、ゆっくり生きよう。
うん。やっぱり、だいぶ素直になった。
フルネームを知らないまま会うって、ちょっとロマンチックかもしれない。そんなふうに思えるまでになった私は、先週とは比べ物にならないくらい、どこかワクワクしているのであった。
迫り来る土曜日のために、船橋のカフェを下見に行き、駅ビルでハンドメイドのイヤリングを買った。
「デートするなら揺れるイヤリングがいい。」
いつだったか、モテモテの先輩から言われたアドバイスを思い出す。
佐野さん。どんな方だろう。「180センチ」というのが大きいのかもしれない。それにしても、身長だけでここまでワクワクできる私自身に、何だか笑える。人を選ぶということ自体は時に残酷だけれども、案外人生って、そんな直感的な判断の連続なのかもしれないなと思った。
#30 ファーストコンタクト
土曜日が歩いてきた。あっという間にその日になって、私はビビりすぎて30分前には駅に着いてしまい、駅ビルで手持ち無沙汰な時間を過ごしている。
「もし会えないなどあれば、緊急の連絡ツールでやりとりしてください」とスタッフさんには言われていた。マッチングアプリみたいに「バックレ」とかはないだろうけど、本当に佐野さんが実在するのかはあってみないとわからな..
あれ?
あの無印良品に入って行った男性は間違えなく、佐野さんな気がする。佐野さんの写真にそっくりだ。佐野さんだ、、!!!
驚きすぎて女性トイレに逃げ込んだ私は、アイラインがおかしくないか、シャドウは落ちていないか、歯には何も挟まっていないか、最後のチェックする。何も考えてないような素振りをしつつ、心の中は大忙しだ。
呼吸を整え、moonさんにラインする。
「まさかの無印で発見しました。笑カッコよくてびっくりです!
行ってきます!!!」
よし。人生初お見合い、幸先がいい気がする。やったるぜ!
10時50分。お互い「今着ました」みたいな顔をしている。私だけが、無印で見かけた事実を知っている。なんだか面白い。
「佐伯さん、ですか?」
「はい。佐野さんですか?」
わかっているのに、確認しあって。
お店の人に通されて、空いている店内を進む。
私のわがままで船橋のカフェにしてもらったんだけど、ここにして、本当よかった。
周りは同世代のカップルとか、一人でコーヒーを飲んでいるおじいさんとかしかいない。変に浮いてもないし、目立ってもない。
順調に会話が進んでいく。
「お見合い、受けていただいてありがとうございます!そして、ここ素敵なカフェですね。」
「いえいえ。こちらこそ申し込んでいただいて嬉しいです。仲人さんに通常のお見合いはホテルラウンジが多いって言われたんですが、こういうところの方が緊張せずに話せるかなと思って。」
「ナイスです!船橋にはたまにきますが、このお店は初めて知りました!佐伯さんのおかげでまた来たいなと思える場所を見つけてしまいましたよ〜。ここ、通っちゃうかもです。」
はにかむ笑顔が素敵で、お見合い断らなくてよかった〜と心の中でガッツポーズをする。
二人でコーヒーを頼み、佐野さんはお店一押しのチーズケーキを、私は自分を貫いてあんみつを頼んだ。男性に奢っていただくことはルールとのこと。
一人当たり約1350円か。
素早く計算してしまいながらなんか申し申し訳ないなと思った。そんな私の罪悪感を無視するかのように、優しく佐野さんは声をかけてくれる。
「あんみつ、いいですねぇ。甘いもの好きなんですか?」
「甘いものはなんでも食べるんですけど、昔読んだ本にやたらとあんみつが出てきていて、そこからは見つけると注文しちゃうんですよね。」
「本好きって書いてありましたもんね!僕も白夜行とかなら読んだことあります!ちなみに、あんみつはガネーシャですか?違うか!笑」
#31 嬉しい、楽しい
「え、あ、ガネーシャですガネーシャ!読まれてたんですね!」
「あれは、ドラマで見て、気になって一巻だけ買ったんですよね。確かにあんみつ食べたくなるのわかります。僕も、甘党でして、喫茶店のクリームソーダとかを年甲斐もなく頼んでしまったりします。」
「おお!ナポリタンとかも?」
「ですです!おしゃれな場所もいいですが、そういう、昭和っぽい雰囲気の店も好きで」
会話が盛り上がってきて、気づいたら。
「そういえば私、南流山市にある喫茶で、ずっと気になっている喫茶があるんですよね。巨大なプリンアラモードがあって、ちょっと見てください、これ!」
と、行きたかったカフェの食べログページを見せてしまうまでになっていた。
いけないいけない。これじゃあ、誘ってるみたいになっちゃった。
「おお!佐伯さんがよかったら、ぜひ行きたいです。こういうとこ、絶対男一人じゃ入れないんで。」
ときた。社交辞令かもしれないが、優しい。
そして、会話のテンポがとてもいい。楽しい。
そこからは、佐野さんの趣味の話、お互いの仕事の話で盛り上がり、気づいたら1時間が経っていた。
プロフィールはあっさりとしか書かれていなかったのだけれども、割と趣味はインドアで、最近は、あえて昔の映画を見たり、いろんなサブスクを使ってドラマを見まくっているらしい。6歳離れているとはいえ、話が合うものも多くて、嬉しかった。(久しぶりに「オレンジデイズ」、「のだめカンタービレ」「女王の教室」、「流星の絆」なんかの話をして、懐かしかった。)
営業職だから、いろんな世代の人にあうような情報取集はしているとのことだったけど、それもあってトークが得意というのはあるかもしれない。
営業の話は聞いたけど、思考停止してしまって流し聞きしてしまった。IT系のシステムの、BtoBとのことで、「ちょっと説明難しいかもしれないんですが」と言われたように、文系の私にはさっぱりだった。でも、楽しげに語っている様子が、なんだかきらきらしていた。
あっという間の1時間。最後に、地元のケーキ屋さんで買ったクッキーを渡した。甘党ということは今日知ったとはいえ、用意しておいたクッキーは、抹茶の風味がたまらない逸品。かなりセンスがいいと自分でも思う。喜んでもらえるはず。
最後は、駅のホームまで見送りをしてもらってしまった。
こうして、私の初お見合いは終わった。
お酒なしで1時間の縛りがあるデート、というのはなんだか新鮮だった。
お見合いに細々としたルールがあるなんて、と思っていたけれど、これも悪くないかもしれない。
中学や高校の時は、ルールがある中だからこそその枠の中で、どれだけ楽しめるかを考えていた。あの頃を思い出すと、こうしたシステムも悪くないような気がしてきた。
素直に、楽しいと思った。
(続く)
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今回登場した本たち
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こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
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