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【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(1)BOOK婚との出会い編

#1  真夜中のスマホ徘徊

23時48分。もう寝ようか、それとも…というタイミングでLINEの通知音が鳴る。
返信するかどうかは、その内容次第だ。

大学のゼミ仲間のグループライン。

「元気な女の子が生まれたよ〜!見て!旦那にそっくりすぎない?笑 本当最近、誰とも話してなくて寂しい。落ち着いたら家に遊びにきて!!!」

深夜にもかかわらず、華やかなスタンプたちが飛び交う。
「はーい。」
口ではそう元気に返信して、ベッドの脇にスマホを置く。

正直、本当に申し訳ないけれど、五連勤最終日の夜に見たい内容ではなかった。明日はお休み。昼過ぎまで寝てやる。そう決めた。・・・。

誰も悪くない。LINEを送ってくれた子も、周りの友達たちも、何にも悪くない。これはただの八つ当たり。私だって、ちゃんと結婚も出産もおめでたいと思ってる。

だけど…。私は疲れている、ただそれだけなのに…。なんだこのモヤモヤは。おめでとうのスタンプひとつも素直に送れない、自分が本当に嫌になる。

せっかく寝ようとしていたのに、目が冴えた。私の悪い癖だ。やめておけばいいのに、わかっているのに、またスマホを手に取り…LINEの友達のアイコンを見て回る。インスタも同様に。ほら。この子も、この子もみんな…そうやって自分が嫌いになる。

婚活。私はこの2文字が嫌いだ。死ぬほど嫌いだ。学生の頃は、なんだかんだ、声をかけてもらえることだってあったのに。だから、待っていて大丈夫だと思ったのに。最近は、出会うためには「頑張らないと」だめだという。これもそれも、コロナのせいだ。…多分。

コロナ禍で、飲み会が激減してからは、話題になっていたマッチングアプリを全部ダウンロードした。これだけやればきっと…と思うのに、いい人はいなかった。

#2   「ぶくこん」とやら

テンプレみたいな自己紹介に、加工した写真。ここは一体なんなんだろうと思った。2人だけ、実際にあったけど…なんだか疲れただけだった。相手はとてもいい人だった。真面目そうだったし、優しそうだった。でも、本当のところはわからない。そもそも、0から知り合って、関係をつめていくことがこんなにも面倒だなんて思わなかった。

「これは…相当頑張らないと進めないぞ」と思った。こんな思いまでして婚活するなら、もういっそ…そんなふうに思って1年が経った。

34歳の春の夜。

ずっと独身同盟を結んでいた親友たちも、アプリや知人の紹介などで続々と結婚している。ついこの間も、結婚相談所に入って半年でゴールインした話を聞き、衝撃を受けた。

そんなふうに勢いで行動ができるようになりたい。

でも、できない。わかっている。
私は、慎重な上に、完璧主義。妥協で結婚なんてしたくない。
素直さのかけらもない。そんな私が、幸せになれる未来はあるのかな…。

絶望しながらインスタを徘徊していると、とあるコピーが目の前に飛び込んできた。

『ひとり』でいられる『ふたり』になろう。

本好きのための結婚相談所『BOOK婚』

「なんや、それ。めっちゃええやん。」東京生まれ東京育ちなのに、つい口からこぼれたのはそんな言葉だった。

本好きのための、と書いてあるところが、なんかいい。添えられたイラストも可愛い。これは、本が好きな人たちを結びつけるサービス?
よくわからないけど、興味はある、というか興味しかない。

よく見ると、これは広告のようだった。こういうのにそのままのせられるのは非常に不本意だけれど、LINEへの追加を誘導してあるので、そのまま進んでみる。微妙そうだったら、途中でブロックすればいい。簡単に繋がりを作ることができて、簡単にそれを断ち切れる、便利で残酷な時代。
深夜テンションでLINEに追加し、コンテンツを流し読みする。

「へぇ… 運営してるのは、ホテルなわけね。なんかTwitterかなんかで話題になってたとこだわ。ブックホテル神保町、っと。」

#3   ちいさな期待

ホテルも出来立てのようだし、まだまだこれから伸び代のあるサービスなのかもしれない。そうだよな〜、ネット魔の私が初めて聞いたくらいだし。このホテルは結構面白そうだった。相談所としての実績は、どうなんだろう…。

なんだかんだで見入ってしまう自分が嫌になる。活字が好きだ。とても。LINEには結婚観の診断テストなんかもあった。こういうのはなんだか、大したことないとわかっていてもやってしまうのが人間のsagaである。いくつかの質問に答えると、「仕事タイプ」と出た。

おお。そうだね、仕事人間の私にとって、これは間違いなく大事な価値観。偶然というかまぁ質問にそんなような項目があったから、びっくりはしないけど、自分の価値観が間違っていないと思えると、なんだか嬉しい。

こればかりは、直感としか言いようがないが、なんだか、「結婚相談所」と聞いてイメージしていたものとは、ちょっと違う気がした。この心地いい違和感はなんだろう。随分前に勧められて結婚相談所の入会案内を取り寄せた時には、自分の偏見のせいで、書類を見るのすら嫌だったのに…。

もしかしたら、「本」という項目があるだけで「なんか良さそう」と思ってしまう、私はそんな人間なのかもしれない。

確かに好きだけど、本!ブックカフェとかブックバーとか、なんかブックって書いてあったら気になっちゃうけれども!
とかなんとか独り言をぶつぶつ言いながら、カウンセリングフォームに名前を書いている自分がいた。

だって、無料だよ?しかもオンライン。勧誘されて無理になったらすぐに終わりにできちゃうし。わざわざ相手の元まで行かなくていいし。下はパジャマでもいいし。便利だよオンライン。

深夜1時を過ぎて、若干申し訳なさはあったけど、希望日を入力。

どうせ何も変わらない。

でももしかすると何かが、動き出す可能性が少しくらいはあるかもしれない。小さな望みをかけて。

気づいたら、スマホを握りしめながら、寝てしまっていた。
心なしか、いつもよりよく眠れた気がした。


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こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。

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