【連載】「私の需要は、ないのでしょうか...。」⑧/婚活物語。
#23 過度の期待
あれからー。自分的、一大イベントと思っていた婚活写真の撮影は、思ったよりも、本当に呆気なく。気づいたら終わっていた。
もっとカメラマンさんからの表情の指示とか、ポーズの具体例とかがあると思っていたけれど、そうしたものはあまりなく。
それどころか、撮影が滞りなく淡々と進んでいく感じが拭いきれず、あまり私を大事にしていないというか…業務の一環、という感じで終わってしまった。これは私の想像にしか過ぎないけれど、担当の男性カメラマンさんの目が「婚活お疲れ」って言っているように見えて、テンションがただただ、下がった。私の思い込みだと、思うのだけれども。
ヘアメイクにお金をかけたからとスタジオは少し安めのところを選んだのが間違いだったのかもしれない。何十枚も撮られた写真を見せてもらうと、それなりに綺麗に写っている自分がいた。でも、ちょっと、嘘くさい笑顔のような気もした。
「レタッチで結構変わるんで〜はい!」と言われ、そんなこと言われても何が何だかよくわからない。モヤモヤしながら、帰路に着く。
いや、別に写真自体の出来栄えに、何かを言いたいわけではない。
なのに、なんだか、気分が良くない。
午前中はあんなにも、楽しかったのに。
もっともっといい時間を過ごしたかった。
もっともっと大事に撮って欲しかった。
人生初のお見合い写真。
そんな、片手間みたいに終わらせないで欲しかった。
美容室が素晴らしすぎたから、スタジオにも過度に期待していたのかもしれない。手取り足取り教えてくれて、満足いくまで撮り直してくれるとか、そういう感じかと思っていた。でも、それがこんなに安いはずないか。リサーチが足りなかった。
思い込んで、期待し過ぎていた。この、スタジオは多分普通に普通の婚活する人にとって、当たり前のサービスを提供してくれている。
私は、どこかで、何かを、無意識に求めていたのかもしれなかった。プチプラなんだから、こんなもんだって。
写真自体はいいんだから、何を欲張りな…。
なんだか、自分が嫌になる。
帰宅してすぐに、ユニクロの部屋着に着替える。落ち着く。
お湯を沸かして紅茶を飲んだ。落ち着く。
なんだか、柄にもないことをした日だった。疲れた。
moonさんからLINEが来ている。
「どうでしたか〜〜??撮影は楽しめましたか??」
ごめんなさい。返す気になれない。
我ながら子供じみているのだけれど、
「はい、頑張りました。データが上がってくるのは来週になるようです。」
とだけ伝えた。
婚活から離れたくなった。
#24 予想外の出来事
翌週。
ようやく届いた写真データ。
彼の言っていたレタッチのパワーなのか、思ったよりも
いい写真、になっていた。勝手に落ち込んでいた事実は隠して、
moonさんに送る。
「お〜〜〜!とっても綺麗に写っているじゃないですか〜〜!!
なんだか、メイクの感じ、印象違いますね。かわいいです。」
眉に気づいてもらえたのかな。嬉しい。
そうだ、教わったメイク、実践してみなきゃ。
勝手に落ち込んで疲れるにはまだ早い。
ここから、ここから。
気を取り直し。改めて。
ようやく、私の「婚活」が始まることとなった。
「もう一度、仕組みを説明しますね。佐伯さんには、IBJのアプリの中から、いい人を見つけていただいて、お申し込みをしていただきたいんです。月に50件までなら申し込みできます!
お見合いの希望を押して、あちらもお受けになると、お見合いが成立します!
逆に、お相手からの希望を、佐伯さんが受けていただくと、それも成立になります。
この後プロフィールを公開しますので、ぜひ活動楽しんでみてください!私たちは、ぜひ紹介したい本好きさんがいればガンガン紹介しますね。こちらは月に20件まで、ご希望に応じて行なっていきますね!」
説明は分かったようなわからないような。
ひとまずアプリにログインし、登録されている会員の顔を眺めてみる。
「え、普通にかっこいいじゃん」
最近活動を始めた方の中から、素直にそう思えるイケメンの写真を複数見つけた。よく見ると、国家公務員も医者もたくさんいる。国立大学や有名私大もわんさか。わお、東大だ。慶応だ。わお、経営者だ。
moonさんは「証明書出してもらっているので嘘をついている人はいない」と言っていたけれど、ここまで経歴がしっかりしていると、逆に不安になる。
『なんでこんなしっかりした人たちに相手がいないの?え、本当にサクラじゃなくて?』
怖くて、「結婚相談所 サクラ」とか「結婚相談所 ハイスペ 理由」とか調べている自分がいた。
なんか、もっと、結婚できない人ってこう!みたいなイメージがあったから、ちょっとびっくりした。けれど、コロナ禍もあって出会い減ってるだけなのかも。いい人いるかも、ここに。
アプリで浪費していた頃の自分に、相談所の登録者、割としっかりしてて良さそうよ〜と伝えてあげたくなった。
ヨシ。午後からガッツリ申し込みするぞ!と意気込む。
#25 希望と現実
そうして、始まった私のお相手探し。
「この人は…文章がなんかダサい。なんか家事してほしいアピールしてるしなんかやだ」
「この人は…え、希望条件20代?なんでよ、ダメじゃん…」
「この人は…あ、良いかも、あ。よくみたら都内限定で探してるのか…」
「この人は…おおおお!!!! あ〜でも身長164ならやだな…」
ん?あれ?
なんか、全然良い人いないんだけど???
ピンとこないんだけど???
あれ???
そうこうしていたら、相談所経由で私宛ての申し込みが来ていることに気づく…
どれどれ。
49歳、会社員、愛知、年収430万。
42歳、公務員、京都、年収730万
50歳、会社員、埼玉、年収590万
え、え、え、ちょっと待って待って。
アプリよりいいといったの、取り消し。
昔はもっと、「いいね」もらえてたよ私…
え。なんでこんなに歳上ばっかなの…え、私需要ないですか??
他の30代はどこ行ったの?みんな20代がいいの???
え、ちょっとパニックを起こしてしまう。
まだ開始してすぐだから…かもしれない。
この40代の方は、千葉に住んでる私に連絡してくるくらいだし、
手当たり次第なのかもしれない。50代の方は…まぁ断ればいいもんね。
これ、どうやって断るんだ?「断る理由??」そんなの、正直に書いていいの??ん??
この回答が本人にいくことはないと、moonさんは言っていたけれど、なんとなく「断る」を押すのも理由を書くのも憚られる。
なんか、私、早くも婚活疲れてきた。
向いてないかもしれない…。
え、本当にいい人いるの?
絶望に近い何かを感じながらも、ときめくほどに魅惑的なプロフィールの方もたくさんいるのは事実で。祈るような気持ちで10人ほど申し込みをしてみた。
次の日になっても、その次の日になっても、
誰からも返事はこない。
同世代の人から申し込みは来るようになったけれど、いまいち好きな顔じゃないし、プロフィールだけじゃ人柄がわからない。
終わった…
開始3日目にして心のシャッターが降りる音がした。
半年で結婚!?そんなの夢物語だと思った。このままじゃ交際どころかお見合いも難しい気がする。
不貞腐れた私は、比較したってしょうがないと思いながらも、
「34歳 結婚相談所 申し込み」
「お見合い 成功 割合」
と画面に打ち込んでは、打ちひしがれていた。
なんか、もう、やめよっかな。
(続く)
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こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
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