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【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(8)活動開始編

34歳彼氏なし。婚活をはじめたばかりの佐伯は、人生初のスタジオ撮影のために、髪型をととのえ、メイクを施してもらい準備万端。最高のスタートダッシュのように思えたが…現実はそう甘くはなく…。


[毎週気まぐれ19時更新/書籍化予定]

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#23 過度の期待

あれからー。自分的、一大イベントと思っていた婚活写真の撮影は、思ったよりも、本当に呆気なく。気づいたら終わっていた。

もっとカメラマンさんからの表情の指示とか、ポーズの具体例とかがあると思っていたけれど、そうしたものはあまりなく。
それどころか、撮影が滞りなく淡々と進んでいく感じが拭いきれず、あまり私を大事にしていないというか…業務の一環、という感じで終わってしまった。これは私の想像にしか過ぎないけれど、担当の男性カメラマンさんの目が「婚活お疲れ」って言っているように見えて、テンションがただただ、下がった。私の思い込みだと、思うのだけれども。

ヘアメイクにお金をかけたからとスタジオは少し安めのところを選んだのが間違いだったのかもしれない。何十枚も撮られた写真を見せてもらうと、それなりに綺麗に写っている自分がいた。でも、ちょっと、嘘くさい笑顔のような気もした。

「レタッチで結構変わるんで〜!はい!」と言われ。とはいえ、そんなこと言われても何が何だかよくわからない。モヤモヤしながら、帰路に着く。

いや、別に写真自体の出来栄えに、何かを言いたいわけではない。
なのに、なんだか、気分が良くない。

午前中はあんなにも、楽しかったのに。

もっともっといい時間を過ごしたかった。
もっともっと大事に撮って欲しかった。
人生初のお見合い写真。
そんな、片手間みたいに終わらせないで欲しかった。

美容室が素晴らしすぎたから、スタジオにも過度に期待していたのかもしれない。手取り足取り教えてくれて、満足いくまで撮り直してくれるとか、そういう感じかと思っていた。でも、それがこんなに安いはずないか。リサーチが足りなかった。
思い込んで、期待し過ぎていた。
このスタジオは多分普通に普通の婚活する人にとって、当たり前のサービスを提供してくれている。
私は、どこかで、何かを、無意識に求めていたのかもしれなかった。おすすめされた場所もあったけど、自分で決めます!って言って、安い写真館を自分で選んだんだから、こんなもんだって。

写真自体はいいんだから、何を欲張りな…。
なんだか、自分が嫌になる。

帰宅してすぐに、ユニクロの部屋着に着替える。落ち着く。
お湯を沸かして紅茶を飲んだ。癒される。
なんだか、柄にもないことをした日だった。疲れた。

moonさんからLINEが来ている。

「どうでしたか〜〜?撮影は楽しめましたか?✨」

ごめんなさい。返す気になれない。

我ながら子供じみているのだけれど、楽しかったとは言わず。
「はい、頑張りました。データが上がってくるのは来週になるようです。」

とだけ伝えた。

なんだか、無性に婚活から離れたくなった。

#24 予想外の出来事

翌週。ようやく届いた写真データ。
カメラマンさんの言っていたレタッチのパワーなのか、思ったよりも
いい写真、になっていた。

勝手に落ち込んでいた事実は隠して、moonさんに送る。

「お〜〜〜!とっても綺麗に写っているじゃないですか〜〜!!
なんだか、メイクの感じ、印象違いますね。かわいいです。」

眉に気づいてもらえたのかな。嬉しい。そうだ、教わったメイク、実践してみなきゃ。
勝手に落ち込んで疲れるにはまだ早い。

ここから、ここから。

気を取り直し。改めて。

準備が整い、ようやく、私の「婚活」が始まることとなった。

「もう一度、仕組みを説明しますね。佐伯さんには、IBJのアプリの中から、いいなと思う人を見つけていただいて、お申し込みをしていただきたいんです。月に50件までなら申し込みできます!」

「お見合いの希望を押して、あちらもお受けになると、お見合いが成立します!」逆に、お相手からの希望を、佐伯さんが受けていただくと、それも成立になります。私たちの方から月に20人まで佐伯さんに紹介させていただくことも可能です!」

「まぁ、やってみないと色々わからないことも出てこないかなとは思うので…この後プロフィールを公開しますので、ぜひ活動楽しんでみてください!大丈夫です!!!!」

説明は分かったようなわからないような。
ひとまずアプリにログインし、登録されている会員の顔を眺めてみる。

「え、普通にかっこいいじゃん」

最近活動を始めた方の中から、素直にそう思えるイケメンの写真を複数見つけた。よく見ると、国家公務員も医者もたくさんいる。国立大学や有名私大もわんさか。わお、東大だ。慶応だ。わお、経営者だ。

moonさんは「証明書出してもらっているので嘘をついている人はいない」と言っていたけれど、ここまで経歴がしっかりしていると、逆に不安になる。

『なんでこんなしっかりした人たちに相手がいないの?え、本当にサクラじゃなくて?』

怖くて、「結婚相談所 サクラ」とか「結婚相談所 ハイスペ 理由」とか調べている自分がいた。

なんか、もっと、結婚できない人ってこう…いもくさい…みたいなイメージがあったから、ちょっとびっくりした。(失礼だけど、おじさんばっかりかと思ってたよ…)

けれど、コロナ禍もあって出会い減ってるだけなのかも。ほんとに、いい人いるかもしれないよ、ここに。

アプリで消耗していた頃の自分に、「相談所の登録者は割としっかりしてて良さそうよ〜!!」と伝えてあげたくなった。

ヨシ。午後からガッツリ申し込みするぞ!と意気込んでスマホを閉じた。

#25 希望と現実

始まった私のお相手探し。

「この人は…文章がなんかダサい。なんか家事してほしいアピールしてるしなんかやだ」
「この人は…え、希望条件20代?なんでよ、ダメじゃん…」
「この人は…あ、良いかも、あ。よくみたら都内限定で探してるのか…」
「この人は…おおおお!!!! あ〜でも身長164ならやだな…」

ん?あれ?

なんか、全然良い人いないんだけど???

ピンとこないんだけど???

あれ???

そうこうしていたら、私宛ての申し込みが来ていることに気づく…

どれどれ。

49歳、会社員、愛知、年収430万。
42歳、公務員、京都、年収730万
50歳、会社員、埼玉、年収590万

え、え、え、ちょっと待って待って。
アプリよりいいといったの、取り消し。
昔はもっと、「いいね」もらえてたよ私…
え。なんでこんなに歳上ばっかなの…??
他の30代はどこ行ったの??
全然好きになれそうにない人ばっかりなんだけど…

え、ちょっとパニックを起こしてしまう。

まだ開始してすぐだから…かもしれない。

気を取り直して、画面を再度見つめる。

冷静に考えて、この40代の京都の方は、千葉に住んでる私に連絡してくるくらいだし、手当たり次第申し込みをしているのかもしれない。

50代の方は…まぁ断ればいいもんね。

これ、どうやって断るんだ?「断る理由??」そんなの、正直に書いていいの??ん??

「断る理由」自体が本人にいくことはないと、moonさんは言っていたけれど、なんとなく「断る」を押すのも理由を書くのも憚られる。

だって、私が申し込んだ相手から、こんなふうにされていることがたくさんあるかもしれないってことでしょ?

なんか、私、早くも婚活疲れてきた。

この制度がそもそも向いてないかもしれない…。

え、本当にいい人いるの?

本好きっていうけど、今のところ、本で繋がれそうな相手もいない…

私にはもともと無理だったの?え?

絶望に近い何かを感じる。

それでも、活動を楽しむために、と渡されたガイドには、「自分から申し込みをすること!」と書かれている。

本当は求められたい。それでも、待っているだけじゃダメかもしれない。
祈るような気持ちで10人ほど申し込みをしてみた。


結果は…悲惨だった。


次の日になっても、その次の日になっても、
誰からも返事はこない。

同世代の人から申し込みは来るようになったけれど、いまいち好きな顔じゃないし、プロフィールだけじゃ人柄がわからない。

終わった…

開始3日目にして心のシャッターが降りる音がした。

半年で結婚!?そんなの夢物語だと思った。このままじゃ交際どころかお見合いも難しい気がする。

不貞腐れた私は、比較したってしょうがないと思いながらも、
「34歳 結婚相談所 申し込み」
「お見合い 成功 割合」
と画面に打ち込んでは、打ちひしがれていた。


なんか、もう、やめよっかな。

ネガティブ・モードが止まらなくて、どうしようもなかった。

(続く)

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こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
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