【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(15)連日のお見合い編
#44 本好きの相澤さん。
真っ先にお見合いの日程が決まったのは、BOOK婚のスタッフさんが紹介してくれた、本好きの相澤さんだった。
申し込みをしたあとすぐに相澤さんからもOKが来て、速攻でお見合いが成立していた。おせっかい大好きなスタッフさんが、根回しをしてくれていたのだろう。そういえば、moonさんも「BOOK婚同士のお見合いが組めると、ついニヤニヤしてしまう」と言っていたっけ。
柚月裕子さんの新作「朽ちないサクラ」をちゃっかり読み終えていた私は、心のどこかで、今日のことを、とっても楽しみにしていたのだと思う。
行きの電車は、運よく座席が空いていた。幸先がいい。揃いに揃ってスマホをいじっている大人たちを横目に、「盤上の向日葵」の上巻を開く。柚月さんの作品だから購入したというわけではなく、ずっと積読していた本。「感想を言い合いたい」そんな小さなきっかけでも、読書は捗るものだなと思う。
ふと前を向くと、目の前に妊婦さんが立っていた。慌てて席を譲ったものの、いつから立っていたのだろう。申し訳ないことをしてしまった。
34歳。年齢だけを考えたら、婚活だけでなく、妊活も視野にいれないといけないのかもしれない。相手ができていざ結婚、となった時に焦り始めても遅いのではないか。最近、Netflixで「コウノトリ」を久しぶりに見て、いろんなことを考えさせられている。
相澤さんは35歳。年齢的にも、ちょうどいい。理想的だ。うまくいってほしい。でも、うまく、いくだろうか。
東京駅のカフェで、チョコレートケーキを頬張りながら、私たちは読書の話に華を咲かせていた。
「今日も暑いですね」とかそういう類の世間話を済ませ、店員さんを呼んで、「当店のおすすめ」と書かれたケーキセットを遠慮がちに注文する。
奢ってもらうのが前提だからこそ、気を遣う。珈琲だけにしたかったけれど、「ぜひケーキも!」と言われ、お言葉に甘えることにした。嬉しいけれど、お見合いのたびにケーキだと、体重が心配。そして、そんなことを考えてしまう自分のことが嫌になる。
柚月裕子さんの話で二人の雰囲気は徐々に高まっていった。子供の頃にお互いに「学校の怪談シリーズ」にハマっていた話でも盛り上がる。相澤さんは静かで控えめだけど、本のことになると、なんだか嬉しそう。きっと幼い頃から誰かと語りたくて仕方なかったんだろうなと勝手に推測する。
ひとしきり本の話で盛り上がった後、
「今度、おすすめの本を交換しませんか?」
と言ってもらえた。
ありがたいお申し出だ。
それなのに。
言語化できないもやもやがわだかまりとなって私を押し寄せてくる。
なんだろう。この感じ。
確かに本の話をしている時はとても楽しいのだけれど、それだけというか。友達ならぜひ!という感じだけれど、この人にときめく未来が、今の私には全く見えない。
本の話をしすぎたからかもしれない。けれど、お互いの価値観や、考え方、これからどんなふうに生きていきたいか、そういうものをあまり感じ取れなくて、お見合いの60分は、「楽しかっただけ」で終わってしまった。
その夜。
仲人さんによると、相澤さんからプレ交際申込の打診があったらしい。それだけでなく、「気遣いや配慮ができるところが要所要所から感じられて、とても心地よい時間でした」とのコメントまで頂けていたとのこと。
その言葉に、もう一度考える。
未来なんて、誰にもわからないか。
とりあえずプレ交際に進み、一度、デートをしてみることに決めた。
#45 公務員の安藤さん。
37歳の公務員。安藤さんとは、大手町にあるホテルラウンジでのお見合いが決まっていた。
とても失礼だけど、イケメンの部類では全くない。と思う。でも、ものすごく、いい人、ということが表情から伝わってくる。全身から、「いい夫」「いいお父さん」という感じがする。
それが、会った第一印象だった。
とってもとっても「普通」。でも、絶対いい人。それは、断言できるなと思った。
安藤さんは、これまでの2人よりも、かなり素直で、お話好き。言葉を選ばずいうとおしゃべりで、年齢の割には子供っぽい気がする。
初対面にも関わらず、かなりテンションが高くて、彼のペースに飲まれて、たくさん話してしまった。
こういう人、高校時代のクラスメイトにもいたな。なんというか、場の空気を読んで、白けないように一生懸命盛り上げてくれる人。
「パーソナルなことまでたくさん話してくれるな」とは思っていたが、母親に対する想いまで聞けたのは少しびっくりした。いい意味で。
安藤さんのお母さんは女手一つで安藤さんと弟さんのことを育ててくれたようで、ずっと働き詰めだったお母さんに感謝してもしきれないのだ、と。
「だからこそ早く結婚して安心させたいのに、今年38になってしまうんです…。矛盾ですね。」と苦笑いをしていた。
お見合いで婚活を始めたきっかけや、相談所での活動歴を聞くのは絶対にタブー。思ったとしても、口には出さない。
でも、なんとなく、これが初めてのお見合いなのではないか?と思った。なんとなく初々しいのも、一生懸命頑張って話してくれている感じも、頷ける気がして。
結局、家族の話から、いつまでに結婚したいのか、子供は欲しいのか、など
話が盛り上がり、二人とも、「なんか、初対面じゃないみたいだね」と笑い合った。
「佐伯さん、こんなことを伝えたと言ったら仲人さんに怒られるかもしれませんが、プレ交際の申し込みをさせていただきたいです。でも、佐伯さんのお人柄はとても素敵で、絶対にモテそうなので不安です。」
駅まで送ってもらったあと、安藤さんは最後にそんなことを言い残し、私の答えも聞かずに、改札の中に消えていった。
男性にあまりグイグイ来られたことのない私にとって、これはどういう意味なのか、さっぱりわからない。でも、悪い気は一切しないどころか、なんとなく安藤さんのことをもっと知りたいなと思うようになっていた。
彼からはすぐにプレ交際の打診が来ていたようで、私も即座にOKをした。
#46 エンジニアの久留米さん。
42歳、IT関係。
プロフィール写真を見て、結構タイプの顔だったことから、なんとなくOKをしてしまったのが、久留米さん。
「結婚は顔より性格」とはいうものの、カッコよかったら新婚生活だって絶対楽しいじゃん、と思ってしまうのが正直なところ。しかも年収が1500万というのが、やっぱる魅力的に見えてしまうわけで。
プロフィールがあまりに短く、どんな人かよくわからなくて、なんとなく申し込みをお受けするのは少し悩んでしまっていたけれど、その表情に後押しされるように、えいやっとOKボタンを押した。
あの時の私に言いたい。
結婚は、確実に、顔じゃない。
久留米さんとのお見合いは、錦糸町のホテルラウンジにて。
8つも年が上ということで、何話そう、と思っていたけれど、心配は稀有に終わった、というか、私に「話す時間なんて」なかった。
永遠に自慢話が続く。
今のキャリアに登り詰めるための苦労話、今の社会や若者に対して思うこと、私が全く関心のないテーマに対して、永遠と。それも、最初のうちは相槌を打っていたことで、かなり「聞いてもらえている」と勘違いされたのか、途中からヒートアップした。
「もう終わりたい…」と思いながらも、話は続く。
こんなに疲れる1時間30分(結局、話が長すぎて切り上げられなかった)があるのか、と思えるほど、辛い時間だった。しかも、それだけうまくいって稼いでますアピールをしていたはずが、
「結婚相談所のシステム、あんまり好きじゃなくてさ〜、男が払うみたいなの、なんかおかしいって思わない?佐伯さん。あ、俺は払うけどね、稼いでるしさ、でも他の男たち、結構きついと思うよ、ホテルラウンジって無駄に高いしね。」などと言われた。
この人、このままじゃ、絶対お見合い通過できないだろうな。
いい人生経験だった。ということにしておこう。稼いでいても、カッコよくても、やはり価値観が合わないと結婚なんて無理だ。
条件だけで、人を選んだから、こうなった。
プロフィールだけじゃ、顔写真だけじゃ、何にもわからない。
そして、お見合い1回だけでわかることだって、限られている。
ここに婚活の難しさがあるなと改めて思った。正しい判断が即座にできる人なんているのだろうか。
でも、もしかすると、婚活は、失敗することに意味があるのかもしれない。
ふと、そんなことを思った。
*
こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
▶️マガジン登録いただくと、続きがすぐに見れます!
▶️主人公が登録していた、BOOK婚のLINEはこちら。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
更新のお知らせは、各種SNSから。
Twitter:@book_konkatsu
https://twitter.com/book_konkatsu
Instagram:@book_konkatsu
note:https://note.com/book_konkatsu