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”笑い”という芸術を放つ「読書芸人」の心に刺さるエッセイ

もうすっかり秋ですね。
秋と言えば食べ物、スポーツ、芸術と楽しみが沢山あります!

今回はそのなかでも芸術にまつわる本を紹介します。
芸術と言っても絵画、音楽、演劇、映画、文学など様々なジャンルがありますよね。

これはあくまで個人的な見解にはなりますが、”お笑い”も芸術の一種だと思います。

コント・漫才のなかのセリフ回し、視線、間合い、どれも緻密な計算から作り上げられています。

特にそれを感じたのが、南海キャンディーズの山里さん、オードリー若林さんの自伝をモチーフに作られたドラマ「だが、情熱はある」

このドラマのなかで、山里さんが相方にたいしてネタのセリフを「あと1秒早く!」と言うようなシーンがありました。

セリフの”間”が1秒違うだけで、爆笑にも沈黙にもなりうる。
そのコンマ1秒の世界で、作り上げられたネタは「もはやアートの域だ・・・」と感じてしまったのです。

今回は、そんなお笑いの世界で独自の感性を生かし活躍する読書芸人のエッセイを紹介します。

オードリー 若林正恭さん

「芸人とは、こうあるべき」を根底から覆しお笑い界の構図を変えてしまった人ではないのでしょうか。

かつて芸人さんのイメージは、明石家さんまさんのように陽気なクラスの人気者がなるような印象でした。

しかし、若林さんはその真逆で、人見知りかつコミュニケーションをとるのがあまり得意ではないタイプ。

そんな若林さんが注目されるようになってからは、引っ込み思案で内気な性格いわゆる”陰キャ”が市民権を得たように感じます。

どちらかというと性格が明るく元気であることがよしとされてきたこの世の中。

内向的な人でも自分の強みを生かし輝けることを証明してくれた若林さんは、多くのひとに希望をもたらしてくれました。

そんな若林さんのエッセイは、ひたすら己の自意識との戦いが刻まれています。


「自己否定とまともに闘ったところで勝ち目はない」

「シャットアウトに効果を発揮するのは没頭だ」

「他人の正解に自分の言動や行動を置きに行くことを続けると、自分の正解が段々わからなくなる。」

「絶望に対するセーフティネットとして、趣味は必要である」

出典:ナナメの夕暮れ

ネガティブはポジティブでは打ち消せない
ではどうすればよいか?

何かに”没頭”すればよいんだ

私自身も生粋のネイティブネガティブなため(笑)、この考えを知ったときは雷に打たれたような衝撃が走りました。

特に考えすぎてしまう性格のひとには是非読んでもらいたいです。

考えかたに共感できたり、生きやすくなるためのヒントが隠されているかもしれません。

オアシズ 光浦靖子さん

今では女性の芸人さんも増えてきましたが、光浦さんはその先駆け的な存在。

世代にもよりますが、めちゃ2イケてるッ!(通称:めちゃイケ)というお笑い番組のイメージが強いですよね。

光浦さんは、芸人の他に執筆活動や手芸(すごいお上手)などマルチに活躍しています。

とても自分に素直で、真っ直ぐな可愛らしい性格の方です。

自らの器の小ささについて「私は、自分より劣っている人と競争した時のほうが、良い結果を出せる人間なんですよ」と言及しています。

生きていると、どうしても見栄をはったり自分を大きく見せようとしちゃいますが、光浦さんは強がりもせず、ありのままの自分をさらけ出しているように見えます。

そんな光浦さん、なんと50歳からカナダに留学しています。

「新しいことを挑戦するのに年齢は関係ない」
そうであってはほしいですが、実際のところ年を重ねると安定志向になりがちですよね。

光浦さんも「新しい自分を見つけて成長する!」と、意気込んでカナダに行ったのではなく、コロナ禍における仕事の激減など将来の不安から何かを変えたく留学を決断しました。

前日譚として、留学するまえに知人のツテでカナダに訪れたさいに、たまたま北斗晶さん・佐々木健介さん夫婦にお会いしたそうです。

その際に北斗さんから代理人を紹介してもらったりと、偶然がいくつか重なり「偶然が3つ重なったら神のお告げ」と自分に言い聞かせ踏ん切りがついたそうです。

確かに、このような偶然の積み重ねを運命と感じない限り、大きな決断をくだすのって難しいですよね。

やりたいことがある。
だけど一歩踏み出す勇気がない。
そんな人に光浦さんのエッセイは「やってみりゃ、意外とできるもんよ~」と背中をポンっと押してくれます。

ピース 又吉直樹さん

又吉さんは芥川賞を受賞した「火花」で小説家として脚光を浴び、舞台作家や詩人など幅広い分野で活躍されています。

学生時代から純文学を好んで読み、太宰治を敬愛しています。

人気バラエティー番組で「読書芸人」という形で特集が組まれたりしますが、まさしくその代表的な存在。

今回紹介したエッセイのなかに、本好きのひとには是非読んでほしいエピソードがあります。
それは「月と散文」に収録されている「あの頃のようには本を愛せなくなってしまった」です。

又吉さんがいかに本を愛しているかが、痛いほど伝わってきます。

鳴かず飛ばずの10~20代、又吉さんを支えたのは誰でもなく本でした。

本を悪く言うひとには

「本じゃなくて、おまえがおもろないやん?
 本の話をよく聞いたか?
 読み始める前日はちゃんとワクワクしたか?
 体調は整えたんか?
 おまえが好きじゃなかったら本も調子出えへんやろ。
 金払って買ったから主従関係にあるとでも思ってんのか?
 おまえと旅行に行く本が可哀想やわ。
 楽しくないやろな」などと本気で思っていた。 

出典:月と散文

このように本気で憤りを感じています。
私自身、この文章を読んで胸にあついものがこみ上げてきました。

又吉さんにとって本は、かけがえのない友達なんです。だから悪く言われたら本気で怒るのも当然ですよね。

ピース 綾部祐二さん

ちなみに相方綾部祐二さんのエッセイを読むとお笑いコンビ「ピース」がいかに異色のコンビかということがわかります(笑)

綾部さんはニューヨークにあるセントラルパークに『CENTRAL PARK』と胸にでっかくデザインされた服を着ていきます。

周りの目や羞恥心から、なかなか容易にできることではないですよね。

ただ、綾部さんにとって周りの反応なんて、どうだっていいんです。
自分が行きたい場所に、着たい服を着ていくだけ。

そのスタンスが、かっこよすぎる。

綾部さんはアメリカでコメディアン、又吉さんは日本で作家とそれぞれ違うジャンルで活躍しています。

この二人が揃ったときに、どのような化学反応を起こすか楽しみで仕方がありません。

最後に

今回紹介した芸人さんの素敵なところは、正直にかっこ悪い部分を見せているところ。

みっともない部分をさらけ出せる人って、信頼できるしカッコイイし強いと思います。

人によく見られたい。
本当の自分をさらけだせない。

このようなことで生きづらさを感じているひとも、多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな人達に「この世界の”正解”は、外にはなく自分たちの内にある」とエールのメッセージを送ってくれている気がします。

世間と葛藤しながら己を貫き通す芸人さんの生きざまを、今回紹介した本を通じて感じてほしいです。

ライター:Reo
(note:https://note.com/book_tell)


最後までご覧いただき、ありがとうございます。 ぜひあなただけの1冊を探しに、遊びに来てくださいね。