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BOOK HOTEL 神保町で読みたい!スタッフKの推し本を紹介します。#1



はじめまして!


BOOK HOTEL 神保町スタッフのKです。

本はもちろん、「言葉」そのものが大好きで、
読むのも書くのもKにとっては欠かせない時間です。
いわゆる「純文学」と言われるものを読むことが多いですが、
ジャンル・言語・作者の背景に囚われず、幅広く読みます。

これから数回にわたり、
当館が誇る蔵書のなかからKのおすすめ本を
(ちょっとニッチな情報を交えて⁉︎)紹介していきます。

今回は、1階ロビーにある本から、「2冊」を選りすぐりました!

①英語で読む!太宰治の名作

1冊目は、太宰治の名作の英訳版!

タイトルは、ズバリ
Dazai Osamu, "Schoolgirl" (Allison Markin Powel訳)

こちら、上記のタイトルを見て、どの作品か想像がつきますか?


Dazai Osamu, "Schoolgirl" (Allison Markin Powel tr.)

カバーからお察しの方もいるかもしれませんが……

実はこれ、短編『女生徒』なんです。

父親を亡くし、母親と暮らす戦時下の少女の一日を描いたこの作品。洋書にしてはとても小さなサイズの本書ですが、日本語の原文でも、文庫本数十ページあまりの短い物語です。

こうしてあらすじを言葉にすると、いかにもシンプルでありふれた話のように思えますが、それこそがこの作品のミソ。

「なんでもない話」を読ませる太宰の筆力。

ふと目に入った情景に動く心の機微や、少女の豊かな想像力と感性を、読者に直接語りかけるように書いています。

心のうちを吐露するような語り口で、あたかも自分自身の話をされているのではないかと読み手が錯覚してしまうのが太宰作品の特徴ですが、この短編も語り手への同化度MAXの作品です。

実はいま、そんな共感度の高さから、
海外で太宰作品が人気を集めているんだとか。
特に『女生徒』の主人公と同じ年代の若い女性たちを中心に、
TikTokなどのSNSでバズったことが現代人気の火種となりました。

『女生徒』の英訳を手掛けたアリソン・マーキン・パウエル氏は、太宰のほかにも、西加奈子さんや川上弘美さんなどの現代文学も含め、幅広い日本語作品を英語圏に送り出しています。

この英訳版の魅力のひとつは、太宰のユーモア溢れる日本語表現がどのように英語で再び書き直されるかという、好奇心をくすぐられる点です。

例えば、「ヨイショ」という感嘆詞、英語だとどのように表現されると思いますか?

ぜひ、当館にお越しいただき、英訳版『女生徒』でパウエル氏の見つけた「答え」を探してみてください!

ちなみに、先日芥川賞を受賞された九段理江さんの、一度目の芥川賞ノミネート作『Schoolgirl』も、パウエル氏の英訳版と同じタイトルです。

実はこの作品、太宰の小説にインスパイアされ九段さんが生み出した現代版『女生徒』なんです。こちらも現代風刺のスパイスがピリリと効いたおすすめ本ですのでぜひ!

「Schoolgirl」が設置されているのは、当館1階ロビーの洋書コーナーです。
現在BOOK HOTEL 神保町では、洋書棚の拡大に力を入れています!

Schoolgirlが設置されている1階洋書コーナー(現在拡大中)


②横書き✖️バイリンガル小説

次にご紹介するのは、
水村美苗さんの 『私小説 from left to right』

タイトル通り、左から右に書かれたこの作品。
日本文学初横書きかつ「バイリンガル(=二言語)」小説なんです。

水村美苗『私小説 from left to right』

どういうこと!?と思いますよね。
文字通り、普通は縦書きである小説が、横書きで印刷されているんです

また、ひらがな・カタカナ・漢字からなる日本語と、アルファベットの連なる英語が入り乱れています。

なぜ作者がそのような形式をとったのかというと、
水村美苗=作中の主人公が、日本とアメリカ、日本語と英語という
二つの場所や言語のあいだで揺れ動くさまを描いた作品だから。

日本語と英語をそれぞれどれだけ理解できるかによって、この小説の言葉をどれだけ受け止められるかは変わってきますが、それはつまり、作者の揺れる心や状況をどれだけ理解できるかということ。

異言語間、異国間に線を引く境界の限度を試すような作品です。

同時に、タイトルのもう半分である「私小説」というのも注目ポイント。

これは、作者自身の体験をもとに、ときに脚色を加えながらもほぼそのまま小説として書いたもののことを指します。

私小説は、日本で独自に発展した文学作品のジャンルと言われますが、欧米文化が流入してきた明治期以降に生まれたもの。
水村さんはこの作風を通して、言語だけでなく、
フィクション/ノンフィクションの境目も問うています。


BOOK HOTEL 神保町の入り口すぐにある、当館のスタッフ選書コーナー「わたしたちをつくった本」の棚。


『私小説 from left to right』もこのうちの一冊です。

『私小説 from left to right』が設置されている「わたしたちをつくった本」コーナー

個性豊かだけれど本好きという共通点を持つスタッフ思い思いの「推し本」たちに、ぜひ会いに来てみてください!

「読書の秋」と言われるこの季節の始まりに、
本を読もう!と思っている方も、
春夏秋冬すべて読書の季節だよ!
という(Kと同じようなタイプの)方も、
心に刺さる本や物語、言葉との出会いがありますように〜!


書籍情報

今回紹介した本はこちら!

Allison Markin Powell訳、Schoolgirl

太宰治『女生徒』

九段理江『Schoolgirl』

水村美苗『私小説 from left to right』


ホテル情報

BOOK HOTEL 神保町

BOOK HOTEL 京都九条

書いた人:BOOK HOTEL 神保町 スタッフK


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