「私は本好きと言えないかもしれませんが」という方はみんな、ちゃぁんと、本好きだと思う。自信を持って「本好き」を名乗ろ?【BOOK HOTEL 定期マガジン「ホンスキ。」】
「本好きといえるかどうかわからないんですが…」
と言っている控えめで謙虚なあなたは、絶対、れっきとした本好きだと思います。
「有名な本を読んでいないし」
「1年に10冊くらいしか読めていないし」
「そもそも読むのが遅いし」
などとおっしゃっている方が多いですが、そんなふうに思えること自体、本への愛を感じます。
先日、とある方からLINEでこのようなお問い合わせがありました。
本好きさんにたくさん集まってほしいから、と「本好きさんのための」と謳ってサービスを展開しているものの、正直、読書量なんて関係ない。わたしたちは、ただただ「本が好き」な方と繋がりたいと心より願っています。
でも、そんなふうに自分の本好き度合いに自信が持てない、という気持ちも痛いほどわかります。
このnoteでは、そんな「本好きを名乗る」ということについて思うことについて、書きました。
自分語りが長くなりますが、どうかお付き合いください。
本好きだけど、本好きと名乗れなかった私
ブックホテルで支配人として勤務して3年目になる私が、この会社に入る時。
社長との面接で伝えた言葉はこのようなものでした。
そう、「本は好き。」でも、「本好きと名乗る」のは、「自信がない」状態でした。
自分がおすすめした本を喜んでもらえるかどうかなんて、わからない。いや、絶対面白いんだけど、それを受け入れてもらえるかなんて、本当にわからない、怖い。
とはいえ、一度本の話になれば、面接そっちのけで、最近読んだ本について喋り倒している自分もいてー。
「本好きじゃなかったらこんなに語れないと思います。」
不安はありましたが、社長の言葉に後押しされ、この世界に飛び込んだのです。
好きな本をただ伝えるだけで、良かった。それに価値があった。
オープンまでのわずかな期間。
そんな中で、「自信がない」なんて言っている時間はありませんでした。
私は、覚悟を決めます。
どんなことを言われても、どんなに恥をかいたとしても、私はただ、自分の好きな本だけを、自分が心突き動かされた本だけを、ひたすらに並べ、そして語りまくっていこう、と。
がむしゃらでした。
オープンから数ヶ月。
私が恐れていたことは、全く起きませんでした。
「何、本好きとか名乗ってるの?」
「本全然読んでないくせに支配人なんてやって」
そんなことを言う人は全くいませんでした。
(もちろん選書が合わない、などとおっしゃる方はもちろん少しはいらっしゃいましたが、全員に喜んでもらう、は難しいので仕方ないなと思ってます。)
それどころか、私の心から愛する本たちを紹介して、
「こんな本があったなんて!さすがプロの選書は違う!」
「自分じゃ気づけなかった。素敵な本に出会わせてくれてありがとう!」
と感謝の言葉をいただけるまでに。
私は、他者から見て、ちゃんと「本好き」だった。
本好きと名乗って良い人物だった。
認めてもらえた気がして、すごく嬉しかったです。
もっと喜んで欲しくて・・・でも、空回り。
でも、人間はよく深い生き物で。
「もっと満足していただきたい」その気持ちから、しばらく思うような読書ができない時間が続いていきます。
いつからか、誰に言われたでもなく、自分でそういうブロックをかけ始めてしまったのです。
支配人になって半年。
ちょうど、本の選書サービスやカウンセリングサービス(お悩みに本でお答えするサービス)などをし始めた時のことでした。
「紹介させていただく立場」という重責が、いつしか、誰かのための読書、に変わってしまい、読書が「MUST」になっていました。
ただでさえやることが多い仕事の後、「読まなきゃ」と本を開く日々。
この世界に数多ある本たちを全て読むなんて、無理なのに、
それでも読めていない本たちがこんなにある、という事実に絶望していました。
そこから半年は、あまり記憶がありません。
文庫本を毎日必ず読み終える、と半ば強制自分の宿題とし、とにかく読みまくりました。
もちろん読書自体は楽しいけれど、「私は本当にこのスタイルで本を読み続けるべきなのか?」と自問自答する日々。
好きを仕事にって、しんどいかもしれない、と弱音を吐いてしまうこともたくさんありました。
スランプを乗り越えて、気づいたこと。
そんな日々が終わりを迎えることになったのは、これまたお客様からの言葉がきっかけでした。
その日は、いつもと同様に、お客様に喜んでもらえる本を予習し、「自分の好き」より「お客様のお好み」を優先して、本をセレクトしていました。
きっと、バレてしまったんだと思います。
私が、少しずつ、読書を楽しめなくなってきていることを。
「moonさんが何も考えずに好きだと思える本が、知りたいです。私に合う本を選んでくれたんだな、というのは嬉しいのですが、私はそれよりもmoonさんが、本当に心から好きな本を語っているところが見たいんです。」
そこからの私は、水を得た魚のように、がむしゃらに本をお勧めしまくりました。
「私の好き」を詰め込んで、詰め込んで、詰め込みまくってー。
その時の選書体験は、今でも鮮明に覚えています。
私は好きな本をただ好きでいたらいい。
読みたい時に読めるだけ、本を愛でて、その良さをどんどん広めていく。繋げていく。
それでいいんだなぁと思ったんです。
それが、求められていたのかもなぁと思ったんです。
本好きの皆様、もっと気楽にいきましょう
え、あなたも「本が好きと言えるか自信がない」って??
もっと、気楽にいきませんか。
もっとラフに、「マックのハンバーガーが好き!」みたいな感じで。
「年間300個食べてないのに好きとかありえない」なんて言われませんよ。笑
読書量、読む時間、読んだことのある作家の多さ。
そんなの、誰にも関係ないです。
ただ、好き。それでいいではないでしょうか。
たった1冊でも、自分にとってのお守りのような存在の本があるなんて、
そのほうが奇跡というか、幸せなことだと思います。
「好き」なもんは好きなんです。
そこに理由とか、そんなものはいらないと思ってます。
どんな形でも、本との関わり方はあなた次第でいい。
私は、この世界で、「本好き」と名乗るハードルを下げたい。
本に関わる全ての人が幸せであってほしいな、と強く思うのです。
「本」の価値を改めて考えるための3冊。
今月は「本」を様々な角度から考える3冊をセレクト。
どれもこれも最高です。
ぜひチェックしてみてくださいね!
みちのきち 私の一冊
装丁がものすごくいいのです、写真で伝わるかな…(半透明のカバーがかかっているのです・・・!ホテルに置いていたら少し使用感が出ちゃってますが…)
つくり手の想いが伝わってくる1冊です。
おそらく学生向けですが、社会人はもちろん、辛いことがあった人、壁にぶち当たっている人などにとって指針となること間違いなし。
読まなくてもいい。とにかくこの本の作りこみ方をまずは感じてください。
文にあたる
図書館司書、出版社の校正者、フリーランスの校正者になった彼女が語る「書物への愛」がぎゅっと詰まった1冊。 校正者が綴る「想い」に触れてください。
その本は
その本は〜という書き出しで始まる物語。笑えたり、泣けたり、考えさせられたり。特に第7夜は必見です。一家に一冊飾っておきたい宝物みたいな本です。
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この記事を書いた人
BOOK HOTEL 神保町支配人:moon