【婚活物語。】本好きのための結婚相談所に入会してみた話(2)無料カウンセリング編
#4 初めまして、moonです
待ちに待ったような、いや、正直もう時間がだいぶ経って、少しだけ気持ちが冷めたような、火曜の夜。
事前にアンケートが送られてきた。こういうの結構好き。どうせなら、と思って、赤裸々に自分の思いを書いてみる。何を言われてもいい。まずは話だけでも聞いてみようと思った。
無料カウンセリングを担当してくれたのは、代表のカウンセラーの方。思っていたより、だいぶ童顔。moonさんというらしい。結婚相談所でイメージしてた、恋愛アドバイザーみたいなイメージとは全く違ったけれど、本が好きなんだなというのは、その表情からとてもよく伝わってきた。
「カウンセリングにお申し込みいただき、ありがとうございます!!
佐伯さんは、本を結構読まれるんですか??」
佐伯舞、34歳。今、私は生まれて初めて結婚相談所のカウンセリングに来ております。フーッと息を吐き、一言。
導入は「BOOK婚」らしく、本の話だった。
なんとなく、結婚のことから入ると思ったから拍子抜けする。
「あ、はい。小説とか、エッセイとか、割と」
私ってば、ぶな〜ん!BU・NA・N!!!
割と、って何!割とって!!!
「小説もエッセイも私も大好きです。例えばどんなジャンルがお好きですか??」
困った。誰が好きとか何が好きとか言われるとすぐ言えない。いや、これは好きな作家が多すぎるのが問題ではあるのだけれど。
「本屋大賞とかの本とか…人に紹介された本とかが多くて…」
「いいですよね、本屋大賞。最近だと何か読まれましたか??」
「えっと…」
一番最近読んだのは、あれだ。なんだったっけ、あの…鯨がどうとかこうとか。それにしても、久しぶりに知らない人と話すから、なんだかうまく話せない。
「あの、有川ひろさんの、くじらの…なんとかってやつで。」
そのまま伝えることにした。
「あ〜〜なんでしたっけ、クジラの…『さんずい』とかついてましたよね…
クジラの波?え〜〜っと…
あ!『クジラの彼』!!」
「あ〜〜それそれ!それです!!!!」
宝探し感。
嬉しかった。
有川ひろさんがお互い好きということで(題名忘れてたくせに)「男性目線での描写凄すぎますよね、こんなふうに表現できる作家さんたちって…本当、人生何周目なんですかね」と笑いあった。話題のドラマ『ブラッシュアップライフ』のパロディのつもりだったのだけど、気づいてくれて、嬉しかった。
嬉しかった。を連続で2回書いている。
語彙がなくなるときは、大抵。
自分の心を許している時だ。
気づくと、画面上の私が、ここ最近で見たことのないような顔をして笑っていた。
私は、もしかして結構自分で思ってるよりずっと、本が好きなのかもしれない。
本の感想を言い合うこと…そして誰かにそれが伝わって、一緒に笑い合えること…。これはものすごく楽しいことなのかも…しれない。
場が温まったところで…。今日の本番は、ここから。
「こうした結婚相談所やマッチングアプリは利用されたことはありますか?」
はじまった。
隠さずに、話そうと決めた。
#5 あの頃は、妥協なんかしたくなかった。
「コロナになってから、出会いが減ってしまって…マッチングアプリをやっていました。それも、かなりの数ダウンロードして…でも、なんか、しっくりこないんですよね。楽しくなくて、やりとりも全て面倒で。テンプレされている感じが、なんかもう無理って思って。」
「実際にお会いになったことはあるんですか?」
「二人だけ…それも、すぐ終わりましたけどね」
「おお、そうなのですね..具体的なお話を伺っても...良いでしょうか」
もちろん。私は、そのために来た。向き合うために、来たんだ。
「ひとりは、営業マンでした。忙しいのか、初回デートの時はずっと仕事の話をされましたね。ずっと喋ってるだけ、って感じでした。かっこよかったですけど、なんかどっと疲れたのを今でも覚えてます。」
「もうひとりは…そうですね、良い人ではありましたが…それだけでした。ここから全てを知って、仲良くなって、歩み寄って…そんなことをしたいなと思えるような相手ではなかった…というのが正直なところです。」
moonさんは頷きながら聞いてくれた。久しぶりに、あの二人のことを思い出す。今こうして思い出すと、あの頃の私は、だいぶ異性に対するジャッジが厳しかったのかもしれない。でも、妥協なんかしたくなかったんだよね。
「それで、もうどうでも良くなって。1年前にアプリを辞めて、最近は全く…って感じです。仕事も忙しいし」
「お話いただき、ありがとうございます。ちなみに佐伯さんは、お仕事はどんなことをされているんですか?」
「IT系の会社の事務ですね。ほとんどリモートになりましたが…それもあって人に会う機会がなくて…」
そこから、いろんな話をした。
幼少期のこと、大学での学びのこと、これまでに頑張ったこと。
今の仕事を始めたきっかけ。趣味、特技。一番ハマっていること、恋愛における悩み…。
気づいたら、moonさんに過去の歴代彼氏のことすらも、ペラペラと話している自分がいた。
結婚相談所というから、もっと結婚に求める条件ばかりのことを話すのか、と思っていた。
どんな人が良くて、いつ結婚したくて、そんなことを伝えて、
「だったらウチがいいですよ」とぐいぐいくるのかと思っていた。
でも、そう言われたら、拒否する自分がいるのは、わかっていた。
多分、アンケートに書いたから。
「婚活、という言葉が死ぬほど嫌い。頑張るくらいなら、結婚なんかしたくない。」
だから、moonさんは、わかっていたのだと思う。
私が、完璧主義で、人と比べてしまうところがあって、自暴自棄になっていること。たくさん婚活について調べて、ネガティブになっていること。
これまでの婚活への嫌悪感を話した後、moonさんは、こう言った。
「婚活って、本当にしんどいもの、なんですかね。」
#6 婚活を楽しむという選択肢
「当たり前です。テンプレの並んだプロフィールから、自分に合う人を見つけ、婚活ファッションに身を包み、毎週誰かとお見合いして、期限内に結婚相手を探す。考えただけで疲れますよ…」
どんどんネガティブになる私を、moonさんは一蹴した。
「私は、嫌いです。婚活はこうあらねば、という考えが。
そりゃあ、私たちも、まだまだ小さな結婚相談所なので、そんな偉そうなことは言えません。
ただ、個人的には、思うんです。
結婚相談所の仲人が考える、「婚活セオリー」が全てなのかどうか、と。
みんな人それぞれ価値観も個性も違うのに、「みんなと一緒」のやり方で、本当に幸せは掴めるるのか?と。
「みんなと一緒」のやり方で自分を偽って、自分を押し殺して…そうやって苦しまないといけないのでしょうか… 。その過程を楽しむのは、ダメなんでしょうか。
読書好きの方でBOOK婚に入会くださる方は、「婚活はこうあるべき」に違和感を覚えている方が多い印象です。
だからこそ、私は、「本」を入り口に、ここにきてくださった方達に
『BOOK婚』を、何かの、人生の手がかりにして欲しいと思っています。
人によっては、最終的なゴールは結婚すること、じゃないかもしれません。
それでも、自分のことを振り返ること、自分らしいプロフィールを書くこと、たくさんの方にお会いすること。
そうやって、婚活を楽しむこと。
そこから、見えてくる未来があるんじゃないかなと本気で思っています。
時には、本の紹介をさせてください。
私たちのアドバイスが、正しいかなんてわからないからです。
いろんな本を読んで、本から、答えを探してほしい。
結婚にも婚活にも、きっと、答えはありません。
答えは、あなたの、佐伯さんの中にしかないと思っています。
お手伝いができることがあればいつでもおっしゃってくださいね。」
ポカンとしながら…moonさんの話を聞いていて、気づいたことがある。
いつの間にか自分を苦しめていた
『こうしないといけない』
『こうあらなばいけない』
その感覚は、自分が自分で植え付けていたものだったということ。
moonさんはこうも言っていた。
「婚活がうまくいく人は、婚活を楽しめる方です。
物事を気楽に捉えている方やお相手に興味を持って、良いところ探しができる方、そんな方はみんなトントン進んでいくことが多いです。」
「佐伯さんのその分析力、コミュニケーション力があれば、本当に、次のお誕生日には、隣に旦那様がいるかもしれませんね!」とも。
佐伯舞、34歳。春の夜。
このカウンセラーは私がまた一つ歳を重ねる、9月19日には旦那が隣にいるという。
そんな時系列でこの先のことを考えたことはなかった。
なんだか、悪くないじゃん、婚活。
理由はないけれど、「ここから始まるかもしれない」とふと思った。
それでも、やっぱり決断するのは怖いもの。ついつい
「あ、仕事が落ち着くのはまだもう少し先で…」という言葉が口をついて出る。
自分でもわかってた。
また、逃げようとしてる、私。
本当は、向き合うのが怖いだけ。
だから、次のmoonさんの言葉を待たずに言った。
「いえ、言い訳してました。やらない理由、見つけてました。
私、やります。後から考えます。
私、BOOK婚で婚活します。」
我ながらいい顔をしていた、と思う。
そうして、私のカウンセリングは終わった。
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こちらは、事実を基にした完全ノンフィクションです。
登場するのは、架空の人物です。なお、記載のサービスの内容は、BOOK婚のサービスに基づいていますが、時期によっては一部変更になっている場合もございます。
代表カウンセラーのmoonが毎週1話ずつUPします。
読み物としてぜひお楽しみください。
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