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自分を見失いがちな、こんな時代。”自分らしく”生きたいあなたへ贈る小説3選

年末、いかがお過ごしでしょうか?
帰省して故郷でゆっくりしている人もいれば、仕事が忙しく落ち着かない人もいらっしゃいますよね。

今年を振り返ると、対面で人と会うことが増えたり、音楽のライブ・スポーツ観戦での声出し解禁など、コロナで失われた日常が戻ってきた感じがします。

その反面、コロナ禍でやりすごす事ができた他者との距離感が、再び近くなった気もします。

「人は人、自分は自分」

わかってはいるが、嫌でも他者の存在が気になってしまうことがある。

電車の中や信号が赤になったときなど、少しでも手持ち無沙汰になると反射的にスマホのSNSをタップしている。

自分の心を軽くしてくれるような投稿を探しているのに、本当がどうかもわからない誰かの自慢話をみて、心臓がチクッと針でつつかれたような感覚になる。

「言うは易く行うは難し」ですが、「自分は自分!至らないところも沢山ある、でもそんな自分が好きだ!」こんなマインドを持っていたい。

今回は、そんな自分を見失いがちになってしまう時代に、自分らしく生きている主人公が出てくる小説を紹介します。

成瀬は天下を取りにいく

「わたしは、この夏を西武に捧げようと思う」

主人公、成瀬あかりは幼馴染の島崎みゆきに、そう高々と宣言する。

成瀬が住んでいる滋賀県大津市にある、ゆいつのデパート西武大津店が閉店する。そのため、夏休みは毎日西武に通い感謝の意を表したいとのこと。

ちなみに成瀬は、変わったことを言って注目を浴びたいわけでもなく、プロ野球の西武ライオンズのファンでもない!

ただ郷土愛が異常に強いため、大津市のシンボルでもあった西武デパートに対して「長い間、お疲れ様でした」と労たいのでしょう。

そして将来は自分が、大津市にデパートを建てたいという野望を打ち明ける。

このように成瀬は、他人の目を気にすることなく、ひたすら己の道を進むんです。

お笑いで天下を取りたいからM-1グランプリに出たり、髪の毛が1ヶ月に1cm伸びるか検証するために丸坊主になったりと、思いついたところで実行できないようなことを平気な顔して行う。

やりたいことがあっても、できない理由ばかり探して、結局何もできなかった経験ってありませんか?

成瀬は「うまくいくか、いかないか」という結果より「挑戦した」という過程を尊重しています。

私自身、この作品を読んでいて悔しかった。
なんで「自分は成瀬になれなかったのか」と。

麦本三歩の好きなもの

こちらは「君の膵臓をたべたい」で一躍有名になった住野よるさんの作品。

軽妙な筆致から作者の住野さんが楽しく文章を書いていることがわかります。恐らく住野さん自身、麦本三歩のこと大好きなんでしょうね。

そんな生みの親からの寵愛を受ける麦本三歩とは、どのような人物なのか?

・氏名 麦本三歩(本名)
・性別 女性
・年齢 25歳
・職業 大学図書館の司書
・好きなもの ブルボンのお菓子、散歩、生クリーム
・特徴 ドジ、天然、変な妄想をしている、言葉をよく噛む

三歩を一言で表すと不思議ちゃん。
本人はそう言われることに対して不服らしいが。

職場では同じミスを何度もするため先輩によく怒られ、ひどい時はゲンコツをくらうこともある。(んなベタな怒られ方、今どき子供でもされない・・・)

とはいえ、可愛い皆のマスコット的存在。
でも、そんな三歩にも意外な一面がありました。

大学時代に仲のよかった友人と久々に再会したさい、自ら命を絶とうとしたことを打ち明けられた三歩。

三歩は、熟考し友人にこう伝えます。

「君の辛さは、私には分からない。だから、もし、本当にもう何もかも耐えられないと思ったら、死んでもいい。止められない。死んじゃ駄目なんて、君の辛さが分からない私には決められない。君の人生だから」

出典:麦本三歩の好きなもの

仮に自分が同じようなシチュエーションに遭遇したら、どんな言葉をかけられるだろうか?

「死ぬことはよくないよ」や「命は大切にしなきゃ」と、安直に正論を振りかざしてしまいそう。

でも、そんなうわべだけの言葉をかけなかった。

生きていることがどうしようもない位ツライという状況は、容易に想像できない。だから、自ら命を絶ちたいと思った友人の苦しみを、三歩なりに考え尊重する姿勢を見せたんです。

こんな難しい状況でも自分の言葉で大切なことを伝えられる、それが麦本三歩なんです。

三歩は死ぬ間際に「麦本三歩として生まれて良かった~」と思えるような人生を送りたいんです。

私たちも最期は「自分に生まれて良かった」そんな風に思える人生にしたいですね。

きりこについて

きりこは、「ぶす」である。
いきなり、ぎょっとする一文から始まるこの物語。

ルッキズム(人の外見に基づく差別)はとてもセンシティブな題材なので、取り扱うのが難しい。

それでも作者の西加奈子さんは、このテーマを通じて伝えかったことがあるのでしょう。

主人公はきりこ、という名前の女の子。
きりこの容姿を説明すると、顔の輪郭はぶよぶよ、ナイキのマークを逆にしたような小さな目、アフリカ大陸をひっくり返したような鼻、劇悪な歯並。

そんなきりこを両親は”世界一可愛い女の子”と惜しみなく愛情を注いで育てたため、きりこも自分は可愛い女の子と思い続けていた。

しかし、小学5年生の時、片思いしている男の子に告白をした際「やめてくれや、あんなぶす。」と言われてしまいます。

このことがきっかけで、きりこのなかで自分の見た目との葛藤が始まる。

本やドラマで「人は見た目が9割」のような言葉を一度は聞いたことがありませんか?

もちろん、初対面で抱く印象は見た目が大部分を占めているし、中身がよければオールOKなんてキレイごとを言うつもりはありません。

しかし、見た目でその人を決めつけてしまうなんて、もったいないし、なんだか虚しくなりませんか?

見た目は「容れ物」にしかすぎない。
きりこも「容れ物」に囚われすぎて、自分で自分を苦しめていた。

人生で経験してきたことが「見た目」「中身」に表れ、その全てひっくるめて自分になるんです。

大人になり、周りの目を気にせず生きていくことを決意したきりこは、こう誓いを立てます。

「自分」の欲求に、従うこと。思うように生きること。誰かに「おかしい」といわれても、「誰か」は「自分」ではないのだから、気にしないこと。

出典:きりこについて

自分のしたいことを叶えてあげられるのは自分しかいない。だから誰になんと言われようとも好きなように生きてやりましょう。

最後に

ここまで読んでいただきありがとうございます!

自分の好きなように生きる。
それは、自分の言動にきちんと責任を持つ覚悟があるとも言い換えられるでしょう。

”責任”を決して他の人に委ねてはいけない。
覚悟があれば、きっとできます。

そして”自分は自分”を大切にしましょう。

ライター:Reo
note:https://note.com/book_tell

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