夏の夜空に願いをかけて。星にまつわる本3選!
夏は、夜の訪れまでたっぷりと時間をかける季節。
「もう夜なのに、まだ明るい!」と思いながら、ついつい夜更かししてしまう時でもあります。
大人になってから、しばらくした時のこと。
真夏の蒸し暑い夜、どうしてもアイスが食べたくて、コンビニまで歩いて行ったことがありました。
空を見上げると良く晴れていて、夏の大三角がきらりと見えたのを覚えています。
人間が誕生する前から、おそらく人間がいなくなった後も、気の遠くなるような長い時間を、星々は輝きつづけている……。
空は、どれだけの数の願いを受け止めてきたんだろう。
そんな物思いにふけりたくなってしまう、夏の星空が好きです。
今日は、夏の夜空を眺めながら読みたい、星にまつわるオススメ小説を3冊集めてみました。
辻村深月『この夏の星を見る』
コロナ禍で懸命に青春を駆け抜けた、日本各地の中高生のお話。
最初に心惹かれたのは、観測会やスターキャッチコンテストといった、わくわくする天体関連のイベント。私は『星の瞳のシルエット(柊あおい)』を読んで育ち、BUMP OF CHICKENの「天体観測」が大ヒットした頃に成人したので、友達や先生と天体望遠鏡をのぞきこむシチュエーションに憧れていたな、と懐かしい気持ちになりました。
とはいえ、こちらのお話は現代のこと。
今の時代だからこそ、良いことも悪いこともあります。オンライン会議やLINEなどでコミュニケーションができる一方、コロナ禍という未曾有の非常事態が、若い彼らを飲み込んでいきます。
読み終わってみると。
大人になると視点が固定されてしまいがちだけれど、子どもたちだって不自由な状況下でがんばってるんだよな、と思ったり、中高生の時間ってこんなにもキラキラして見えるんだな、とはっとしたりする、すてきな物語でした。
私が過ごした青春時代と、今の子どもたちが過ごす青春は、同じ景色ではない。かつて、私の親と私がそうであったように。
青春ならではの、まばゆいだけじゃない心の葛藤もすべて包みこむように描きだす、辻村深月さんの手腕に脱帽しました。
中高生も大人にもオススメできる一冊です!
凪良ゆう『汝、星のごとく』
いわゆる「毒親」に振り回されて育った子ども二人が惹かれあい、そこから成長して大人になるまでの過程を、ていねいに優しく撫でるように積み上げたお話です。
心にへばりついてきて振りほどけない親の妄執、からみつくような展開に苦しくなりながらも、暁海と櫂、ふたりの主人公の軌跡はきらきらと輝いてまぶしい。乾いてしまった心を満たしていく、ふたりのやわらかなかけあいと、彼らの支えとなった人々の言葉。
絶望的な状況で、それでも生きていかなくてはならない。
愛というものの形について、深く考えさせられました。
言葉の連なりが、まさに風に揺れる枝葉のようで、しなやかで美しい。
ふたりが暮らした島と海の景色、目に見えるようでした。
2023年本屋大賞受賞。表紙の題字を彩る金色、周りにちらばる星のきらめきがとても綺麗。夏の一冊にオススメです。
原田マハ『星がひとつほしいとの祈り』
さまざまな年代の女性を主人公とした短編集。
原田マハさんの文章は、景色と感情を混ぜあわせた描写がとても心に響きます。
表題作「星がひとつほしいとの祈り」は、ある夏の日に松山市・道後温泉で語られた物語です。
その祈りは痛切に胸をつらぬく、あまりにも透明なひかり。離れたもの、もう会えないもの、それでも歩んできたこれまでの人生。
読了後は、夜空にひかる星がいっそう輝きを増すようでした。私は私の星を見つけられたのだろうか、そんなことを思ってしまうほどに。
原田マハさんの情景描写は、人物を際立たせる魅力があります。
人が眺める風景というものは、こんなにも感情に揺さぶられるんだとしみじみ感じました。
夏の夜空に願いをかけて
夏といえば七夕というイメージですが、星にまつわるイベントを楽しむのにぴったりの季節でもあります。
夏の大三角だけでなく、早朝に訪れる流星群も見やすいですし、キャンプやバーベキューなどの時も、天気が良ければ満天の星を楽しめます。
ちなみに……BOOK HOTEL 神保町では、プラネタリウムの貸し出しも行っております!
ご希望の方はフロントまでお知らせください✨
夜も更けた頃、ホテルのお部屋に映し出される、プラネタリウムの星々。
ほんとうの星とは違っても、想像しながら眺めるのは読書と同じかもしれません。
きらめく星々は、音を立てない。
つめたいようにも、あたたかいようにも見える。
本を読み終えてから見上げる星空は、願いをかけたら叶うような気もして。
星にまつわる小説3本、この夏の読書にぜひ!
ライター:なずなはな
編集:BOOK HOTEL 神保町 支配人 moon